No Room for Squares!

街と猫と追憶を撮る

4回目の長井②〜ぺんてる inside




これも外すことの出来ない長井のランドマーク。昭和の子供であれば誰でも知っていた「ぺんてるクレヨン」。何故クレヨンが必要だったのか、今となっては不明だが、昭和の子供は誰もが持っていた。その「ぺんてる」は今も現役の会社で、アナログ文具だけでなく、液晶タブレットなどの電子機器も製造しており、売り上げの6割超は海外であげているという。この看板を見てから、僕は「ぺんてる」のことが気になって仕方がないのだ。その「ぺんてる」は、昨年末からドラマさながらの大騒動を迎えた。脱線するが、以下に事の顛末を記す。


「ぺんてる」は、株式非上場の会社である。その持ち株は、創業家、現経営陣と従業員持株会(会社)、取引先及び社員OB、が保有している。ことの始まりは、何代か前の社長(操業家出身)が2012年にクーデーターで解任されたことだ。解任された社長は復帰を目指すが、創業家の親族の同意も得られず断念する。そして自らが保有していた株式(全株式の約38%弱)を投資ファンドに売却する。それが2018年のことだ。そして事務機器最大手のコクヨが、その投資ファンド自体を買収し、突如ぺんてるの筆頭株主に躍り出る。事前の相談がなかったと憤る「ぺんてる」。するとコクヨ側は、敵対的TOB(株式公開買付)を宣言し、「ぺんてる」を完全子会社化しようと牙を剥く。コクヨは、既に全株式の約38%を所有している。それに対し「ぺんてる」側(役員、従業員持株会)が保有する株式は、約13.5%でしかない。残りは以下の通りとなる。
①創業家が、約13%
②取引先及び社員OBが、約35.5%
つまりは、創業家がコクヨ側につけば50%を超え、ゲームオーバーだ。だが創業家は、会社側についた。コクヨは、②の株式のうち、約12%相当を獲得すればゲームに勝利する。ところが、事はそう簡単に進まない。ここで事務機大手の「プラス」がホワイトナイトとして参戦する。プラスは、コクヨ側の買取価格と同額の一株3500円での株式買取を宣言する。コクヨも退けない。コクヨは一株4200円での買取と一気に勝負に出る。コクヨは「勝った!!」と確信したことだろう。だが、蓋をあけてみれば、その結末は衝撃的なものだった。コクヨ側が手にした株式は7%台。最終的な持ち株比率は約46%程度。それに対し、ぺんてる、プラス連合は優に50%を超える株式を確保した。ここにコクヨの野望は潰えた。株式売買において、わざわざ安い価格を提示している方に売却することは異例中の異例だという。ぺんてるOBは、お金よりも会社(ぺんてる)の持つ価値観を選んだということになる。ここで終えたいところだが、追記することがある。ひとつは、「ぺんてる」も一枚岩ではなく、コクヨ派と反コクヨ派に割れていたということだ。そこから情報のリーク(プラスの参戦情報とか)もあれば、怪文書が出されもしたという。もうひとつは、コクヨの若社長が買収前から「ぺんてる」の経営陣刷新案をインタビューで答えるなどして、ぺんてる関係者の猛反発を買ったということだ。コクヨの若社長は、40代半ばである。若かろうと、二代目(若社長は4代目)であろうと、優秀な経営者は数多くいる。でもコクヨの社長は、世間がイメージする通りの典型的なボンボン社長だ。ぺんてるは、創業家出身の社長をクーデターで解任するような正義感に燃える風土を持つ。コクヨ若社長の態度は、ぺんてるOB社員には許容出来なかった。「あんな若造に札束で頬を叩かせない」、これが真相ではないかと僕は考える。そして最後に、その解任された「ぺんてる」の元社長が、マスコミのインタビューでコクヨに肩入れする発言をしたことで、復帰の可能性があるのではと疑心を産んでしまったことだがダメ押しだ。面白いというと叱られるかもしれないが、こんなにスペクタルな出来事も珍しい。誰か、ドキュメンタリーにするか、実話を基にした小説を書いて欲しいものだ。

・・・。大脱線した。こんな可愛いキャラクター、しかも昭和匂のする懐かしいキャラクター。その会社は今も健在で、キャラクターからは想像できない闘争が繰り広げられていたのである。そして、長井でこの看板を見つけなければ、僕はそんなことに興味すらも持たなかっただろう。町を歩くことは、経済の勉強にもなるのである。(続く)



X-PRO3 / XF23mm F2R WR